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宗教
私の住んでいるマンションは、入口のところにオートロック機能があります。
ただし、別のところに通用口があるので・・・
訪問セールスや勧誘の人たちが直接各戸のドア前まで来てしまうことがあります。
私は年度末で会社を辞めますので、有給休暇を消化させてもらっていました。
ちょうど、PCに向かって『誰にも見せない裏の顔③』という自身の体験談を書いていたときのことです。
旅行先での恥ずかしい体験を脳裏によみがえらせながら・・・
キーボードを打ちつつ、
(思い出しちゃう)
かなり悶々とした気持ちになっていました。
恥ずかしいけど・・・はっきり書けば、オナニーしたくてたまらない気分です。
そんなときに・・・
外廊下のほうから、それとなく耳に入ってくる声がありました。
(またセールスか)
何の気なしに、PCの前から立ち上がっていました。
玄関先で耳を澄ませてみます。
(あ、違う)
(宗教だ)
まだ、何軒か先のあたりにいるようでした。
インターホンに向かって、何かを話しかけている女性の声が響いています。
きっと、順番にうちにも来る・・・
これまでも、ときどき(数ヵ月に1回ぐらい?)宗教の勧誘の人が来ることはありました。
私は、まったく関心がないので・・・
いつも居留守を使うか、
「うちはけっこうです」
そう言って、すぐにインターホンを切ってしまうようにしています。
悪いけど、本当に興味本位でした。
(どんな人?)
ドアスコープから、外を覗きます。
お隣さんのところまで来ている気配がしました。
ドアチャイムを鳴らしていますが、留守のようです。
(次は、うちだ)
こっそり顔を見てやろうという、ほんの『いたずら心』でした。
ドアスコープに目をつけて待ち構えながら・・・
その後ろめたさに、妙にどきどきしてしまいます。
きゅうんとしました。
もともと悶々としていたこともあって、
(どきどきどき)
ある種、こんな『覗き』をしている自分に興奮してきてしまいます。
自然と・・・パンツの中に手を突っ込んでいました。
(うぅ。。。)
次の瞬間・・・
私の目の前に、相手の姿が現れます。
(あ・・・)
珍しいと思いました。
こういうのって、女性2人組のことが多いというイメージを持っていましたが・・・
20歳ぐらいの可愛らしい女の子と、30代ぐらいの男性という組み合わせです。
スコープから目を離しました。
同時に、
「ピンポーン」
うちのチャイムが鳴り響きます。
いくら頭を使ったところで、このときの感情をうまく文章で表現することはできません。
衝動に襲われる自分に動揺していました。
居留守を使って無視すべきだと、わかっているのに・・・
(ああ。。。)
部屋に戻ってインターホンを取るのではなく、直接ドア越しに返事をしていました。
「はい」
ここは自宅です。
さすがに、まずいと思いながらも・・・
もう抑えられなくなっている自分がいました。
(だいじょうぶ)
退職に伴い、どうせ月末には引っ越しをする予定になっているのです。
別に、住まいを知られたところで・・・
「私、○○と申します」
「こんど特別な催しがありまして、そのご案内に・・・」
ドアの向こう側から、女の子のすごく丁寧な声が聞こえてきます。
(ごめんね)
(あなたには、何の恨みもない)
慌てて服を脱ぎ捨てながら、
「何かのセールスですか?」
ドア越しに問いかけていました。
アドレナリンが湧きあがって、舞い上がるように脳内が高揚していきます。
「いえ、違います」
「少しだけお時間をいただけませんか?」
あっという間に、『全裸』になっていました。
脱いだ服を洗濯機のほうに放り投げます。
「お話だけでも聞いていただけませんか?」
(どきどきどき)
わかっていました。
本来だったら、
(いちど、ドアを開けたが最後・・・)
(延々と帰ろうとしないつもりなんでしょう?)
一呼吸、間をおいてから・・・
「2,3分で済みますか?」
ちょっと冷たい感じに尋ねてみせます。
「あっ、はい!」
「ありがとうございます」
(どきどきどき・・・)
(どきどきどき・・・)
覚悟を決めました。
(こんな格好でドアを開ける。。。)
すでに、内心の興奮もマックス状態です。
(こういうの)
(いちどやってみたかった)
ノブに手を伸ばしました。
鍵を外して、
(どきどきどきどき・・・)
「ガチャッ」
ドアを開けます。
「あ・・・」
何も身に着けていない私の姿に、
「あ・・すみません!」
女の子が、戸惑いの表情を浮かべていました。
その後ろで、男が目を見開いています。
(ひいいいん)
(恥ずかしい)
必死に平静を装いました。
目のやり場に困っている彼女たちに・・・
「私、いつも家ではこうなんで」
「悪いけど気にしないで」
いとも平然とした口調で、さらっと言ってのけてみせます。
男の目線に、
(ヤあん、見ないで)
本当は、心臓が破裂しそうになる私・・・
(見ないで、見ないでえ)
視線を浴びているのをわかっていながら、表向きはなんとか平静を保っていました。
(男が見てるう)
死にそうな気持ちになりながら・・・
「で、なんですか?」
私は、堂々とはだかのままです。
(あああ、だめだ)
(恥ずかしすぎる)
10秒と耐えられませんでした。
自分にはこんなの無理なんだと、やってみてから思い知らされます。
「はい、お忙しいところすみません・・・」
(もうだめ)
(やっぱり帰って)
このまま追い返すしかないと思いました。
男性もいるから遠慮してくるだろうと見越したうえで・・・
あえて、
「さすがにドアを開けっぱなしは困るから」
かたちだけ玄関内へと促そうとするふりをしてみせます。
「すみません」
「お邪魔いたします」
えっと思いました。
(相手がこんな格好でも)
(『またにします』とか言わないの?)
すっと入ってきたふたりが、後ろでドアをしめています。
もちろん部屋にはあがらせませんが、内心焦りました。
(いやん、困る)
(どうしよう)
狭い玄関口に、ふたりが並んで立っています。
やや躊躇いがちながらも、
「すみません、お忙しいところ」
すぐに女の子がトークをはじめてきました。
「今日は、お休みですか?」
意識的に私の首から上しか見ない感じで、ぐいぐいと話しかけてきます。
そのメンタルの強さに感心しながら、
「ええ、まあ」
「仕事がCAなんで、休みが不定期で」
とにかく私は平然としてみせていました。
「えっ、すごいですね!」
「お仕事、大変ですよね」
(ああん)
(視線が痛い)
男のほうには、めちゃめちゃ見られているのがわかります。
CAだなんて嘘をついていますが、それ相応の容姿を持っているという自信はありました。
その私が、
「ええ、まあ」
素っ裸で目の前にいるのです。
私たちの会話に『うんうん』と頷いていますが、その目線だけはしっかりと・・・
(見ないで見ないで)
(だめだめだめ、もうだめ私)
泣きそうでした。
こんなはずではなかったのです。
とてもじゃないけど、もう演技なんて続けられる心境ではありません。
(ああん、見ないで)
(見ないで、お願い)
完全に限界でした。
服を着ていないことが、恥ずかしくて恥ずかしくて・・・
女の子が、
「私たち、○○と申しまして・・・」
はじめて自分たちの団体名を名乗りました。
「えっ、宗教!?」
私は、はっとしたように驚いてみせます。
そして、
「ああ、ごめんなさい」
「私、そういうの関心ないんで」
一気に興味を失くしてみせるふりをしました。
男のほうが、
「失礼ですが、いまどこかの宗教に入って・・・」
すかさず会話に割って入ってきます。
「すみません、その気ないですから」
「勧誘なら帰ってもらえますか」
すごく迷惑そうに言いました。
それでも、なおも私の目をみつめながら・・・
「『○○』には、○○が・・・」
「今まであなたには・・・」
男が、たたみかけるようにアピールトークをしてきます。
「帰ってください」
「私、こんな格好ですし」
つられるように・・・
彼の目線が、一瞬『すっ』と下に落ちました。
(ああ、今だ。。。)
「帰ってって言ってるじゃない」
半分やけになった気分で、キレたふりを演じます。
「だいたい、なんなの!?」
「さっきから、じろじろと」
怒ったように食ってかかってみせました。
「そんなに女のはだかが珍しいの!?」
「見たけりゃ見なさいよ!」
その場で、右脚を『がばっ』と真上に振り上げます。
ストレッチのときの要領で・・・
(あああん)
開脚したままの片脚立ちになっていました。
目の前にいる男に、自分の股のあいだがまる見えになるようにします。
唖然として固まるふたり・・・
(ひいいいん)
(死んじゃう)
女の子が、
「ガチャッ」
愕然とした表情でドアの外に出ていきます。
すぐに脚を下ろして、後ろ向きになってみせました。
前かがみになって、
「見たいんでしょっ!?」
自分の両手でお尻を鷲づかみにします。
まだそこに棒立ちでいる男に、思いっきり見せつけてやる私・・・
(あああ、死んじゃう)
たぶん、ほんの5秒かそこらでした。
男のほうも、
「ガチャ」
失礼しましたとか言いながらドアの外に出ていきます。
急いで鍵をかけました。
同時に、その場に崩れ落ちてしまう私・・・
(ごめんなさい)
(・・ごめんなさい・・・)
罪悪感でいっぱいになりながら、いつまでも立ち上がることができません。
緊張の糸が切れたように、
(ああ、ごめんなさい)
そのまま放心状態になる私でした。
(PS)
長文にお付き合いいただいてありがとうございました。
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