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恭子温泉続き
(続きです)
車をスタートさせながらも、
(最低・・・最低・・・)
無理矢理さわられたときの『茶髪』の手のひらの感触・・・
まだそのまま残っているかのような感覚があります。
(二度と、こんなところ来ない)
ミラー越しに遠ざかっていく駐車場をみつめながら、自己嫌悪でいっぱいでした。
(はやく帰りたい)
早く帰って、きちんとお風呂に入りなおしたい・・・
嫌悪感に苛まされて、いらだちが収まりません。
すべてを洗い流したい気分でした。
もういちど、きちんとお風呂に入りたくて仕方ありません。
国道へと向って山道を走らせながら、アクセルを踏み込みかけて・・・
でも、すぐに急停止していました。
寂れているとはいえ、いちおう温泉旅館が立ち並んでいる一角です。
いま通り過ぎた旅館・・・
たしか『日帰り入浴』の看板が出ていたような気がします。
車をバックさせました。
立ち寄りでの入浴が可能とあるのを見て、そのまま駐車場に入ります。
車から降りて、建物の中に入りました。
こじんまりした、小さな旅館です。
ちょうど、家族連れの一行がチェックアウトするところでした。
フロントの男性に日帰り入浴のことを尋ねます。
すると、
「午後は、○時からなんです」
すごく申し訳なさそうに言われてしまいました。
(ついてないときは、とことんついてない。。。)
でも、仕方ありません。
現実とは、いつもそんなものです。
なんだか、がっくり疲れてしまいました。
お食事処があったので昼食をとることにして、おそばを注文します。
食べ終わってからも、しばらく『ぼーっ』としていました。
出されたお茶をいただきながら、いろいろなことを考えます。
(あんな嫌な思いまでして)
こんなところまで来ておきながら、私はいったい何をやっているのでしょう。
私はこんな、みじめな人間じゃないはずです。
会社では、気づかないふりをしてるけど・・・
遠くからいつも私を見ている男性たちが何人もいることを、私は知っています。
(本当は臆病な私だけど。。。)
どんなときだって、この外見の容姿だけは常に私の味方をしてくれるはずでした。
(私が本気を出せば。。。)
心のどこかで、そんな驕りがまだ消えません。
旅館を出て、深呼吸しました。
午前よりもはるかに暖かくなって、いい陽射しになっています。
そう・・・
私は今、こんな山の中に来ています。
私のことを知る人が誰もいない、自分だけの世界にいるのです。
どう考えても、このまま帰るのはしゃくでした。
車に乗りこんでエンジンをかけます。
『二度と行かない』
そう思ったのは、ついさっきのことなのに・・・
あの露天温泉へと、また車を向けている自分がいました。
(今度こそ)
唯一心配なのは、『茶髪』たちの存在でした。
彼らがいなくなっていることを祈りながら、車を運転していきます。
左に寄ってくれた自転車3台を、一気に追い越しました。
駐車場が見えてきます。
(あ・・・よしっ)
彼らのオートバイは、もうありませんでした。
他の車も見当たりません。
急に、運が向いてきたような気がしました。
おそらく、あの露天温泉はいま無人のはずです。
すべてがリセットされたような気持ちになりました。
あの先には・・・また私だけの世界が待っています。
いちばん奥に車を駐めて、荷物を準備します。
ちょうどそのとき・・・
向こうから自転車が入ってきました。
制服姿の男の子たちです。
さっき私が追い抜いた3台でした。
(もしかして)
胸の中で、心臓がどきどきしてきます。
(あの温泉に?)
だとしたら、まさに信じられないようなタイミングでした。
駐めた車の中から様子をみます。
(間違いない)
彼らは、森の歩道のすぐ手前に自転車を停めていました。
(どうする?)
このタイミングなら、チャンスはじゅうぶんにあります。
とっさに、頭の中で計算していました。
相手は・・・あれはたぶん高校生・・・
しかも3人もいる・・・
小・中学生とは、わけが違います。
下手をすれば、また『茶髪』のときのようなことにもなりかねません。
トートを持って、車を降りました。
3人がいる森の小道の入り口へと歩いていきます。
彼らがどんな子たちなのか、見極めなければなりませんでした。
もし『茶髪』たちのような生意気タイプだったら、絶対にパスです。
近づいていくうちに、その心配がなくなっていくのを感じました。
(だいじょうぶ)
ぱっと見だけでも、すぐにわかります。
彼らは、明らかに『まじめ君』たちでした。
午前中のあの出来事の反動でしょうか。
本当は内気なはずの私なのに・・・
(今こそ頑張らなきゃいけない)
自ら必死にチャンスをつかみたい気持ちになっていました。
3人は自転車を停めたわきで、ペットボトルのジュースを飲んでいます。
勇気を出しました。
それでも、
「こ、こんにちは」
ついつい遠慮がちな感じになって声をかけます。
3人がいっせいに私を見ました。
そして、いきなり話しかけてきた私を怪訝そうにみつめます。
「あの・・・○○湯って、ここですか?」
一瞬、3人で顔を見合わせあってから、
「そうです」
真ん中の男の子が答えてくれました。
ここがそうなんだ・・・そんな表情で小道の先を眺めるふりをして、
「あ、あの・・・もしかして」
「みなさんも、○○湯ってとこに行くところですか?」
3人が頷きます。
(やるしかない)
決心していました。
この子たちなら大丈夫です。
きっと・・・絶対に・・・チャンスでした。
おどおどしそうになる自分を鼓舞します。
さらに勇気を振りしぼりました。
「あ・・・あの・・」
「じゃあ、一緒に連れていってもらっていいですか?」
「なんかひとりだと・・不安だし・・・」
男の子たちは、お互いに顔を見合わせますが・・・
でもすぐに、
「いいですよ」
最初の男の子がOKしてくれました。
その素直そうな表情に『裏表』は感じません。
(よかった)
やっぱりいい子たちです。
私は、演技を始めていました。
嬉しそうな笑顔をつくって、
「ほんと?ありがとう!」
3人にお礼を言います。
彼らについていくかたちで、森の歩道を歩いていきます。
心の内に燃えるものがありました。
午前中の嫌な出来事が現実なら、今のこの瞬間もまた現実です。
なんとか彼らと仲良くなろうと頑張っている自分がいました。
気まずさがあったのも、ほんの最初のうちだけです。
「何年生?」
「今日は、学校お休みじゃなかったの?」
私がにこにこと話しかけているうちに・・・
「どこから来たんですか?」
「○○○美に似てる!」
3人ともすぐに打ち解けてきてくれました。
どの子も、私がみつめると恥ずかしそうに目をそらします。
女性にぜんぜん免疫がない・・・いかにもそんな印象でした。
しゃべっているだけで、
(男子校?)
私に対してどきどき照れている、男の子たちの感じが伝わってきます。
彼らは高校2年生とのことでした。
GW中なのに、今日は午前中だけ部活があったそうです。
その帰りにみんなで温泉に寄って汗を流すことにしたと言っていました。
私が、
「学校帰りによく来るんだ?」
驚いたように尋ねると、
「うん、ときどき来ます」
中でもいちばん真面目そうな『まじめ君』が答えてくれます。
「いいなあ、うらやましい」
隣の男の子に『にっこり』してみせると、
「へへ」
あごの細い『ひょろり君』が、照れた顔で頷きました。
(かわいい)
なんだか自信が出てきました。
彼らとの距離をもっと縮めようと、作戦を考えます。
「そうだ、ちょっと待って」
私が立ち止まると、みんなが振り返りました。
トートの中からデジカメを取り出します。
「ごめん、シャッター押してくれる?」
私より背が低い『おかっぱ君』に、カメラを手渡しました。
カメラを持った彼の手を、
「ここ・・・ここに合わせて、ここ押すの」
操作を教えるふりをして、私の手のひらで包んでみせます。
内心、実は私のほうがどきどきしながらも・・・
彼の息づかいの中に、手と手を触れ合わせていることの緊張を感じます。
近くの木の横に立ちました。
被写体として立つ私を、3人がいっせいにみつめます。
彼らの視線を意識しながらカメラに『にっこり』微笑むと、
「ぴぴっ」
おかっぱ君がシャッターを押してくれました。
カメラを受け取りました。
後ろの画面部分で、撮った画像を彼といっしょに確認します。
まじめ君とひょろり君も寄ってきました。
4人で顔を寄せ合うようにして、小さな画面をみつめます。
「ばっちりだね、ありがとう」
おかっぱ君にお礼を言って、カメラをしまいました。
「○○○美に似てるって言われませんか?」
「それってお天気お姉さん?・・・前に言われたことある」
おしゃべりしながら、3人ともすごく楽しそうです。
気持ちの壁がなくなってきているのを感じていました。
ほんの数百メートル、いっしょに歩いて来ただけなのに・・・
本当にいい子たちです。
そして彼らひとりひとりが・・・
私のことを『きれいなお姉さん』として意識しているのが、手に取るようにわかります。
高校生を相手に自尊心をくすぐられている私がいました。
われながら単純だなぁと思いますが・・・
彼らの前で『キュートなお姉さん』を演じながら、胸がどきどきしてきます。
でも・・・
だからと言って、男の子たちに特別な情が移るわけでもありませんでした。
私はひどい女です。
自分のために、純粋な彼らを利用しようとしているのですから。
(嫌な思いをさせるわけじゃない)
(彼らだって、迷惑に思うわけじゃない)
一生懸命、自分の良心に言い訳します。
あの『朽ちた表示板』が見えてきました。
「あそこ?」
ひょろり君に聞くと、
「あの横から下りていくんだ」
得意げな顔で教えてくれます。
(もっとできる)
(わたしなら、できる)
「ねえ・・」
おかっぱ君に微笑みかけました。
「ここでも撮ってもらっていい?」
カメラを手渡して、表示板に並んで立ちます。
みんなが、にこにこ顔で私をみつめていました。
(恥ずかしい)
ちょっと照れながら、私にできる最高の微笑みでお澄まし顔をします。
この顔・・・そしてノーメイクの私・・・
実際の年齢よりも、3つも4つも若く見えているはずです。
「ぴぴっ」
おかっぱ君がシャッターを押してくれました。
計算通りです。
私が戻るのを待つまでもなく、3人だけでもう画像を確認しています。
カメラの後ろの小さな画面を前に、顔を寄せ合う男の子たち・・・
いちばんはじっこは、まじめ君でした。
彼の肩に手を置いて、
「見せて見せて」
私もぐっと顔を寄せます。
いっしょに画面を覗きこもうと・・・
偶然を装って、彼の横顔に自分の頬をくっつけていました。
まじめ君が、息をすくめたのが伝わってきます。
「OKだね、ちゃんと撮れてる」
カメラを受け取って、
「ありがとう」
トートにしまいます。
(恥ずかしい)
私自身が、かなりどきどきしていました。
(照れちゃう)
まじめ君は、このハプニングがよっぽど嬉しかったみたいです。
明らかに上気しているのがわかる彼を、
『ん・・・どうしたの?』
そんな、何事もないような顔でみつめてあげます。
まさに思春期の男の子たちの『瞳』です。
『茶髪』たちとは違って、本当にいい子たちでした。
もし、この子たちにお風呂を覗かれてしまったら・・・
私は恥ずかしさに耐えられるでしょうか。
(とても無理)
死んでしまうかもしれません。
「よし、行こ」
3人に続いて、いちばん後ろから階段道を下りていきました。
「うわ、けっこう急なんだね」
初めて来た人のように驚いてみせます。
目の前を行くひょろり君が、
「だいじょうぶ?」
気にして何度も振り返ってくれました。
いちばん下まで降りきりました。
「わあ着いた・・・」
「すごいなあ、ここ」
素直に感動しているふりをしてみせます。
カメラは、きっとあとで役に立つはず・・・
そんな計算がありました。
すぐさまトートからデジカメを取り出して、
「ぴぴっ・・ぴぴっ」
景色を撮ります。
そんなふうに、あらためて写真好き(?)のようにアピールしていました。
男湯スペースのはじっこに行って、川の流れを撮影するふりをします。
護岸の下を覗きこみながら、
「あのすだれが、もう女湯?」
川沿いの先を指して、ひょろり君に聞きました。
「そうだよ、ここ下でつながってるから」
3人とも『俺たち詳しいもん』という顔をしています。
(この子たち・・・知ってる)
心臓がどきどきしました。
まさか本当に『女湯覗き』は、したことないでしょうけど・・・
護岸の下を伝っていけば、すぐに女湯の下まで行けてしまうということを知ってはいるのです。
「わたし行くね。連れてきてくれてありがとう」
3人にお礼を言いました。
もう『これでお別れ』という感じで、にこやかな微笑みを最後に印象づけます。
そのまま奥の木戸へ向かっていきました。
女湯スペースへと入ります。
すでに興奮で胸がいっぱいでした。
さっきから、ずっと心臓がどきどきしっぱなしです。
(よくやった)
われながら、パーフェクトな展開です。
自分でもよく頑張ったと思いました。
服を脱いで岩の上に重ねていきます。
(あとは・・・)
あの子たち次第でした。
(本当に来る?)
あれだけしゃべった男の子たち・・・
もし彼らに覗かれたなら・・・わたし恥ずかしすぎます。
・・・はたして、その羞恥心に耐えられるでしょうか。
下着もとって、全裸になります。
湯だまりにからだを沈めました。
もし覗かれるとしたら、左側のあのすだれの裏からです。
束ねた竹茎(?)が、隙間だらけのあの『すだれ』・・・
昨年もやっていますから、私は知っていました。
向こうから覗こうとすれば、実は私のほうからもまるわかりです。
来るでしょうか・・・
(来て。。。)
あんなに頑張ったんだから・・・
(お願い、来て)
胸をどきどきさせながら、その瞬間を待ちます。
3分・・・5分・・・
まだ気配はありません。
(まじめそうなあの子たち)
本当に来てくれるでしょうか。
もし誰かが『女湯を覗こう』と言いだしたとしても、
『そんなことしちゃだめだ』
あのいちばんの『まじめ君』が、周りを止めようとするかもしれません。
(来て)
私、みんなのために頑張ったんだよ・・・
じっとしていることに我慢できなくなりました。
湯だまりから出て、石垣をまわりこみます。
木戸の隙間から男湯を覗いてみました。
ひょろり君が湯船につかっているのが見えました。
あとのふたりは・・・
(あ。。。)
はじっこのコンクリート部分から身を乗り出すようにして・・・
護岸の先を眺めています。
腰にタオルを巻いたあの子たち・・・
(やっぱり気にしてる)
行けば女湯が覗けるんじゃないかと、きっと逡巡しているのです。
ちょっと意外でした。
まじめ君が、いちばん率先している感じです。
心の中で、彼を応援していました。
(降りちゃえ)
時間は限られています。
こうしている間にも、誰かほかの人がやって来てしまうかもしれません。
(まじめ君、降りちゃえ)
どれくらいのあいだ、そうしていたでしょうか。
木戸の隙間からなりゆきを見守りながら、祈っていました。
しばらくして・・・
振り返ったまじめ君が、ふたりに何か言っているのが見えます。
そして、あっという間に・・・
彼は、護岸の下に降りていました。
(来る!)
あとのふたりは動く様子がありません。
そこまで見届けて・・・
私は、木戸から離れました。
「ざば」
急いで湯だまりに入ります。
(来る・・・来ちゃう!)
待ちに待った瞬間でした。
お湯の中に、肩まで沈めます。
(わたし、覗かれちゃう)
心臓のどきどきが、尋常ではありません。
どきどきどき・・・
どきどきどきどき・・・
(ああ。。。)
すだれの隙間に、はっきりとシルエットが透けて出ました。
護岸の下に潜んだまま、首だけ出して・・・
こっちを覗いている人間がすぐそこにいます。
(イヤあ、変態。。。)
もちろん、こっちからは何も見えていないふりをしていました。
何も気づいていないお姉さんを演じます。
覗いた彼も驚いたことでしょう。
もともと女湯スペースは広くありません。
お湯につかっている私との距離は、3mぐらいしかありませんでした。
どきどきどき・・・
彼と真正面に向き合ったまま、何も知らないふりをします。
どきどきどき・・・
自然な感じに空を見上げて、目をつぶりました。
まぶしい陽射しを、まっすぐ顔に受けて・・・
「んー」
気持ちよさそうに表情を崩します。
お湯の中で、ぐーっと伸びをしました。
(ほら、私のこんな恥ずかしい顔。。。)
(あなただけに見せてあげる)
お湯の心地よさに『うっとり』とした・・・
満足げな『にっこり顔』をしてみせます。
肩までお湯につかった私と、すだれの向こうの男の子・・・
顔の高さは、ほぼいっしょです。
まじめ君もどきどきしていることでしょう。
目の前でリラックスする『お姉さん』をみつめながら、
お願い、お湯から出て・・・
きっとそんなふうに、やきもきしているに違いありません。
お湯から出れば、確実にまる見えでした。
高校生の男の子に、自分のヌードをお披露目してしまうことになります。
(ああん、イヤ)
(やっぱり、わたし恥ずかしいよ)
でも、やるしかありません。
これこそ、私が望んだシチュエーションなのですから。
ぼそっと、
「あっちぃ」
ひとりで、つぶやいてみせました。
そして・・・
(ああん)
お湯の中から立ち上がります。
思いっきり、おっぱいまる出しでした。
(見ないで)
(見ないでぇ)
そのまま湯だまりのふちに腰かけます。
(イヤぁ、恥ずかしい)
見られているとわかっていながら、何も隠すことができません。
(だめぇ乳首。。。)
よりによって、これでもかというぐらいに固く膨らんでしまいました。
(恥ずかしい。。。)
(わたし恥ずかしいよぉ)
あふれだす泣きそうな感情を押し隠して・・・
考え事でもするかのように『ぼーっ』と佇んでみせます。
手でお湯をすくって、自分の肩にかけました。
軽くマッサージする感じで肩を揉んで、腕をさすり・・・
また手のひらにお湯をすくいます。
「ぱちゃ、ぱちゃ」
からだにお湯をかけました。
さして大きくもない胸ですが、一生懸命に揉みあげてみせます。
男の子の視線を意識しながら・・・
まるでボディクリームでも擦りこませるときのような手つきで・・・
何度も自分のおっぱいを摩りあげてみせました。
(もうだめ)
感情が爆発しそうでした。
本当に泣きだしてしまいそうです。
とてもではないですが、この恥ずかしさには耐えられません。
手を下ろして、また『ぽけーっ』としてみせました。
ちょっとのぼせている雰囲気で、うつむきます。
手持ちぶさたな感じで・・・
アンダーヘアをつまんでいました。
意味なく『ピーン』と引っ張って、手遊びしてみせます。
湯だまりのふちに腰かけている私の股は、ちょうど彼の目線と同じ高さでした。
(ああん)
見えているでしょうか。
お湯に湿ったヘアを、手先でなんとなく弄びながら・・・
その下に見えてしまっているかもしれない『あそこ』に、
(もうだめ)
自尊心を掻きむしられます。
さすがに耐えられなくなって、
「ざぶ」
私は、またお湯の中に逃げ込んでいました。
肩までお湯に沈めた私ですが・・・
とてもすだれのほうを正視できません。
あまりに恥ずかしくて、無表情を貫くのも限界です。
お湯の中で、反転するように後ろ向きになっていました。
湯だまりのふちに両腕を置いて、その上にあごを載せます。
自分の腕に顔を突っ伏しながら、
(恥ずかしい)
羞恥心に奥歯を噛みしめていました。
泣きそうになる自分を抑えながら、とにかく顔を隠します。
(だいじょうぶ)
必死に気持ちを落ち着かせていました。
(だいじょうぶだから)
私は、お風呂を覗かれてる『かわいそうな』被害者・・・
・・・表向きは、『何も知らないお姉さん』なんだから。
(いけないのは、女湯を覗いているあの子のほう)
(私は何も悪くない。。。)
何事もないような顔で、正面に向きなおります。
とにかく意識して自然体を装っていました。
数分ごとに腰かけたり、またお湯につかったりを繰り返します。
(ああん見られてる)
自虐的な気持ちでいっぱいでした。
覗きの被害者になりきって、堂々と全裸のままでいてみせます。
(よかったね、まじめくん。。。)
(お姉さんのはだか、見たかったんでしょ?)
背徳的な興奮に、胸のどきどきが止まりません。
もう何度目でしょうか。
冷えてきたからだを温めようと、お湯の中につかっていると、
(あ。。。)
すだれのシルエットが、ちらちら動いているのが見えました。
(どうしたの?)
(もう戻るの?)
そっぽを見ているように目線をはずしたまま・・・
視界のはじっこで様子を窺います。
(・・ん?)
すだれの隙間ごしに、ちらちらと向こうの動きが見えます。
(あ!)
人影が増えていることに気づきました。
(もうひとり来た)
すだれの裏側に、顔がふたつ仲良く並んでいるのがはっきりとわかります。
どきどきどき・・・
その瞬間、プレッシャーが加速していました。
(ひょろり君?)
(それとも、おかっぱ君なの?)
どっちなのかは、わかりません。
いま来たこの子も、いざ覗いてみて私との近さにびっくりしたに違いありません。
すだれに顔を押しつける勢いで、隙間から覗いてきています。
どきどきどき・・・
やはり、この距離感は普通じゃありません。
男の子がふたりに増えて、ものすごい重圧を感じていました。
でも、迷いはありません。
(私は何も知らないんだから)
かわいそうなお姉さんになりきるまでです。
「ざば」
お湯の中から立ち上がりました。
そのまま、湯だまりのふちに腰かけます。
どきどきどき・・・
まる出しの胸を露わにしたまま、何食わぬ顔をしてみせました。
高校生の男の子たちの目が、
どきどきどきどき・・・
私のおっぱいに釘付けになっているはずです。
どきどきどき・・・
(耐えられない)
もう心臓が破裂しそうでした。
どきどきどき・・・
(もう、どうにでもなれ)
この子たちのために・・・
もっと恥をかいてあげようという気持ちになります。
(見てて)
覚悟が固まった瞬間でした。
湯だまりのふちに腰かけたまま、
「んー」
ばんざいするように、腕を真上に伸ばします。
「んー・・んんん」
全身で『ぐーっ』と、伸びをしました。
そして、そのまま後ろに『ごろん』・・・
地べたに背中をつけてみせました。
仰向けのまま気持ちよさそうに、
「ふー」
まぶしい陽射しを、全身に浴びてみせます。
空が真っ青です。
(恥ずかしい)
白い雲が、形を変えながら『すーっ』と流れているのが見えました。
(恥ずかしいよ)
のけぞるような姿勢で、両脚だけをお湯の中に下ろしています。
開き気味になった私の股が・・・
ちょうど彼らの真正面を向いていました。
(あの子たち)
さぞかし興奮していることでしょう。
たての割れ目が『まる見え』のはずでした。
(恥ずかしいよぅ)
自虐的な興奮が、どんどん高揚感を煽ります。
そのつらい体勢から、
「ふー」
お湯の中の両脚を、空中に持ち上げました。
足の置き場を求めるように・・・
両脚を大きく左右に開きます。
ひざを立てて、湯だまりのふちに足を置きました。
(ああああん)
自分でやっておきながら、
(イヤぁ、泣いちゃう)
覗いている彼らの前で、思いっきりの大股開きです。
恥ずかしい部分が、開けっぴろげに露わでした。
(お願い見ないで)
割れ目・・・というか、穴まで開いている気がします。
陽射しのまぶしさに目を閉じました。
(見ないでぇ)
自尊心が、ぶるぶる震えます。
あくびするみたいに、
「うーん、んんん」
仰向けのまま、伸びをしました。
まさか見られているなんて夢にも思わない、きれいなお姉さん・・・
リラックスを演じながらも、もう半分気が狂いそうです。
(もういい)
もう・・・だめ・・・・
(見て)
お行儀悪く、まる見えになっている私のあそこ・・・
そのあられもない格好に、男の子たちも嬉々としていることでしょう。
(見たかったんでしょ?)
何もかもを投げ出したような陶酔感に、頭がぽわーんとしてきます。
(ああ。。。)
快感でした。
恥ずかしすぎて、恥ずかしすぎて・・・
それが狂おしいほどに快感です。
もう・・・むり・・
鼻の奥がきゅーんと熱くなりました。
いまにも涙があふれそうになってしまいます。
この屈辱的な気持ちに、もう耐えられませんでした。
もう、これ以上は無理です。
立てていたひざを下ろしました。
お湯の中に脚が入ります。
仰向けのからだを捩じるようにして、上半身を起こしました。
そのまま、
「どぼん」
お湯の中に、身を沈めてしまいます。
潮時でした。
まだはっきり見えている、ふたつの顔のシルエット・・・
意識的に、頭の中を空っぽにしていました。
わざと何も考えないようにします。
(もう、じゅうぶん)
お湯の中で目をつぶりました。
(帰ろう)
冷えたからだが、温まってくるのを待ちます。
「ざば」
お湯から出ました。
荷物を置いた岩のところまで歩いていきます。
これで最後というつもりで、今度は全裸の立ち姿を披露してみせていました。
トートの中からスポーツタオルを取り出して・・・
ゆっくりと全身を拭きます。
(あ、カメラ・・・)
小道具に使おうと思っていたデジカメの存在を、
(しまった)
ここまできてから思い出していました。
(もう、だめだ)
今さら自然体を装って演技を続ける自信はありません。
それよりも、このふたりが誰なのか確かめたい気持ちに駆られていました。
からだを拭き終えると同時に、手早く服を身に着けていきます。
荷物をまとめて、その場を後にしました。
「ガタンっ」
木戸を抜けて、男湯スペースへ出ていきます。
そこに残っていたのは、ひょろり君でした。
現れた『お姉さん』の視線に、恥ずかしそうに湯船で縮こまっています。
(ということは・・・)
あれは、まじめ君と、おかっぱ君・・・
私は、何食わぬ顔でひょろり君に声をかけました。
「あれ?・・・みんなは?」
答えに困った彼は、なんとも微妙な表情になって口ごもっています。
それはそうでしょう。
まさか『あなたのお風呂を覗きに行ったよ』なんて、言えるはずもありません。
「ここ、いい温泉だね」
唯一ここに残った、ひょろり君・・・
もしかしたら、この子がいちばん真面目なのかもしれません。
「じゃあね、ばいばい」
最後まで何も知らないお姉さんを装って、別れを告げました。
階段道を昇って、森の歩道を駐車場へと向かいます。
この数時間のあいだに、いったいどれだけのことがあったでしょう。
『茶髪』、『おデブ』とのイヤな体験・・・
『まじめ君』たち相手の、どきどき体験・・・
すべては『運とタイミング』のいたずらだったような気がします。
帰路の運転の道すがら、いろいろと思いを馳せていました。
(調子に乗ったらしっぺ返しにあう)
過去にも何度も思い知らされたことです。
(成長してないなぁ)
いい意味で悪い意味でも、私は私なんだな・・・
そんなふうに反省しながらハンドルを握っていました。
(PS)
ずっと続きを書こうと思っていて、今日やっと書くことができました。
長文にお付き合いくださって、ありがとうございました。
車をスタートさせながらも、
(最低・・・最低・・・)
無理矢理さわられたときの『茶髪』の手のひらの感触・・・
まだそのまま残っているかのような感覚があります。
(二度と、こんなところ来ない)
ミラー越しに遠ざかっていく駐車場をみつめながら、自己嫌悪でいっぱいでした。
(はやく帰りたい)
早く帰って、きちんとお風呂に入りなおしたい・・・
嫌悪感に苛まされて、いらだちが収まりません。
すべてを洗い流したい気分でした。
もういちど、きちんとお風呂に入りたくて仕方ありません。
国道へと向って山道を走らせながら、アクセルを踏み込みかけて・・・
でも、すぐに急停止していました。
寂れているとはいえ、いちおう温泉旅館が立ち並んでいる一角です。
いま通り過ぎた旅館・・・
たしか『日帰り入浴』の看板が出ていたような気がします。
車をバックさせました。
立ち寄りでの入浴が可能とあるのを見て、そのまま駐車場に入ります。
車から降りて、建物の中に入りました。
こじんまりした、小さな旅館です。
ちょうど、家族連れの一行がチェックアウトするところでした。
フロントの男性に日帰り入浴のことを尋ねます。
すると、
「午後は、○時からなんです」
すごく申し訳なさそうに言われてしまいました。
(ついてないときは、とことんついてない。。。)
でも、仕方ありません。
現実とは、いつもそんなものです。
なんだか、がっくり疲れてしまいました。
お食事処があったので昼食をとることにして、おそばを注文します。
食べ終わってからも、しばらく『ぼーっ』としていました。
出されたお茶をいただきながら、いろいろなことを考えます。
(あんな嫌な思いまでして)
こんなところまで来ておきながら、私はいったい何をやっているのでしょう。
私はこんな、みじめな人間じゃないはずです。
会社では、気づかないふりをしてるけど・・・
遠くからいつも私を見ている男性たちが何人もいることを、私は知っています。
(本当は臆病な私だけど。。。)
どんなときだって、この外見の容姿だけは常に私の味方をしてくれるはずでした。
(私が本気を出せば。。。)
心のどこかで、そんな驕りがまだ消えません。
旅館を出て、深呼吸しました。
午前よりもはるかに暖かくなって、いい陽射しになっています。
そう・・・
私は今、こんな山の中に来ています。
私のことを知る人が誰もいない、自分だけの世界にいるのです。
どう考えても、このまま帰るのはしゃくでした。
車に乗りこんでエンジンをかけます。
『二度と行かない』
そう思ったのは、ついさっきのことなのに・・・
あの露天温泉へと、また車を向けている自分がいました。
(今度こそ)
唯一心配なのは、『茶髪』たちの存在でした。
彼らがいなくなっていることを祈りながら、車を運転していきます。
左に寄ってくれた自転車3台を、一気に追い越しました。
駐車場が見えてきます。
(あ・・・よしっ)
彼らのオートバイは、もうありませんでした。
他の車も見当たりません。
急に、運が向いてきたような気がしました。
おそらく、あの露天温泉はいま無人のはずです。
すべてがリセットされたような気持ちになりました。
あの先には・・・また私だけの世界が待っています。
いちばん奥に車を駐めて、荷物を準備します。
ちょうどそのとき・・・
向こうから自転車が入ってきました。
制服姿の男の子たちです。
さっき私が追い抜いた3台でした。
(もしかして)
胸の中で、心臓がどきどきしてきます。
(あの温泉に?)
だとしたら、まさに信じられないようなタイミングでした。
駐めた車の中から様子をみます。
(間違いない)
彼らは、森の歩道のすぐ手前に自転車を停めていました。
(どうする?)
このタイミングなら、チャンスはじゅうぶんにあります。
とっさに、頭の中で計算していました。
相手は・・・あれはたぶん高校生・・・
しかも3人もいる・・・
小・中学生とは、わけが違います。
下手をすれば、また『茶髪』のときのようなことにもなりかねません。
トートを持って、車を降りました。
3人がいる森の小道の入り口へと歩いていきます。
彼らがどんな子たちなのか、見極めなければなりませんでした。
もし『茶髪』たちのような生意気タイプだったら、絶対にパスです。
近づいていくうちに、その心配がなくなっていくのを感じました。
(だいじょうぶ)
ぱっと見だけでも、すぐにわかります。
彼らは、明らかに『まじめ君』たちでした。
午前中のあの出来事の反動でしょうか。
本当は内気なはずの私なのに・・・
(今こそ頑張らなきゃいけない)
自ら必死にチャンスをつかみたい気持ちになっていました。
3人は自転車を停めたわきで、ペットボトルのジュースを飲んでいます。
勇気を出しました。
それでも、
「こ、こんにちは」
ついつい遠慮がちな感じになって声をかけます。
3人がいっせいに私を見ました。
そして、いきなり話しかけてきた私を怪訝そうにみつめます。
「あの・・・○○湯って、ここですか?」
一瞬、3人で顔を見合わせあってから、
「そうです」
真ん中の男の子が答えてくれました。
ここがそうなんだ・・・そんな表情で小道の先を眺めるふりをして、
「あ、あの・・・もしかして」
「みなさんも、○○湯ってとこに行くところですか?」
3人が頷きます。
(やるしかない)
決心していました。
この子たちなら大丈夫です。
きっと・・・絶対に・・・チャンスでした。
おどおどしそうになる自分を鼓舞します。
さらに勇気を振りしぼりました。
「あ・・・あの・・」
「じゃあ、一緒に連れていってもらっていいですか?」
「なんかひとりだと・・不安だし・・・」
男の子たちは、お互いに顔を見合わせますが・・・
でもすぐに、
「いいですよ」
最初の男の子がOKしてくれました。
その素直そうな表情に『裏表』は感じません。
(よかった)
やっぱりいい子たちです。
私は、演技を始めていました。
嬉しそうな笑顔をつくって、
「ほんと?ありがとう!」
3人にお礼を言います。
彼らについていくかたちで、森の歩道を歩いていきます。
心の内に燃えるものがありました。
午前中の嫌な出来事が現実なら、今のこの瞬間もまた現実です。
なんとか彼らと仲良くなろうと頑張っている自分がいました。
気まずさがあったのも、ほんの最初のうちだけです。
「何年生?」
「今日は、学校お休みじゃなかったの?」
私がにこにこと話しかけているうちに・・・
「どこから来たんですか?」
「○○○美に似てる!」
3人ともすぐに打ち解けてきてくれました。
どの子も、私がみつめると恥ずかしそうに目をそらします。
女性にぜんぜん免疫がない・・・いかにもそんな印象でした。
しゃべっているだけで、
(男子校?)
私に対してどきどき照れている、男の子たちの感じが伝わってきます。
彼らは高校2年生とのことでした。
GW中なのに、今日は午前中だけ部活があったそうです。
その帰りにみんなで温泉に寄って汗を流すことにしたと言っていました。
私が、
「学校帰りによく来るんだ?」
驚いたように尋ねると、
「うん、ときどき来ます」
中でもいちばん真面目そうな『まじめ君』が答えてくれます。
「いいなあ、うらやましい」
隣の男の子に『にっこり』してみせると、
「へへ」
あごの細い『ひょろり君』が、照れた顔で頷きました。
(かわいい)
なんだか自信が出てきました。
彼らとの距離をもっと縮めようと、作戦を考えます。
「そうだ、ちょっと待って」
私が立ち止まると、みんなが振り返りました。
トートの中からデジカメを取り出します。
「ごめん、シャッター押してくれる?」
私より背が低い『おかっぱ君』に、カメラを手渡しました。
カメラを持った彼の手を、
「ここ・・・ここに合わせて、ここ押すの」
操作を教えるふりをして、私の手のひらで包んでみせます。
内心、実は私のほうがどきどきしながらも・・・
彼の息づかいの中に、手と手を触れ合わせていることの緊張を感じます。
近くの木の横に立ちました。
被写体として立つ私を、3人がいっせいにみつめます。
彼らの視線を意識しながらカメラに『にっこり』微笑むと、
「ぴぴっ」
おかっぱ君がシャッターを押してくれました。
カメラを受け取りました。
後ろの画面部分で、撮った画像を彼といっしょに確認します。
まじめ君とひょろり君も寄ってきました。
4人で顔を寄せ合うようにして、小さな画面をみつめます。
「ばっちりだね、ありがとう」
おかっぱ君にお礼を言って、カメラをしまいました。
「○○○美に似てるって言われませんか?」
「それってお天気お姉さん?・・・前に言われたことある」
おしゃべりしながら、3人ともすごく楽しそうです。
気持ちの壁がなくなってきているのを感じていました。
ほんの数百メートル、いっしょに歩いて来ただけなのに・・・
本当にいい子たちです。
そして彼らひとりひとりが・・・
私のことを『きれいなお姉さん』として意識しているのが、手に取るようにわかります。
高校生を相手に自尊心をくすぐられている私がいました。
われながら単純だなぁと思いますが・・・
彼らの前で『キュートなお姉さん』を演じながら、胸がどきどきしてきます。
でも・・・
だからと言って、男の子たちに特別な情が移るわけでもありませんでした。
私はひどい女です。
自分のために、純粋な彼らを利用しようとしているのですから。
(嫌な思いをさせるわけじゃない)
(彼らだって、迷惑に思うわけじゃない)
一生懸命、自分の良心に言い訳します。
あの『朽ちた表示板』が見えてきました。
「あそこ?」
ひょろり君に聞くと、
「あの横から下りていくんだ」
得意げな顔で教えてくれます。
(もっとできる)
(わたしなら、できる)
「ねえ・・」
おかっぱ君に微笑みかけました。
「ここでも撮ってもらっていい?」
カメラを手渡して、表示板に並んで立ちます。
みんなが、にこにこ顔で私をみつめていました。
(恥ずかしい)
ちょっと照れながら、私にできる最高の微笑みでお澄まし顔をします。
この顔・・・そしてノーメイクの私・・・
実際の年齢よりも、3つも4つも若く見えているはずです。
「ぴぴっ」
おかっぱ君がシャッターを押してくれました。
計算通りです。
私が戻るのを待つまでもなく、3人だけでもう画像を確認しています。
カメラの後ろの小さな画面を前に、顔を寄せ合う男の子たち・・・
いちばんはじっこは、まじめ君でした。
彼の肩に手を置いて、
「見せて見せて」
私もぐっと顔を寄せます。
いっしょに画面を覗きこもうと・・・
偶然を装って、彼の横顔に自分の頬をくっつけていました。
まじめ君が、息をすくめたのが伝わってきます。
「OKだね、ちゃんと撮れてる」
カメラを受け取って、
「ありがとう」
トートにしまいます。
(恥ずかしい)
私自身が、かなりどきどきしていました。
(照れちゃう)
まじめ君は、このハプニングがよっぽど嬉しかったみたいです。
明らかに上気しているのがわかる彼を、
『ん・・・どうしたの?』
そんな、何事もないような顔でみつめてあげます。
まさに思春期の男の子たちの『瞳』です。
『茶髪』たちとは違って、本当にいい子たちでした。
もし、この子たちにお風呂を覗かれてしまったら・・・
私は恥ずかしさに耐えられるでしょうか。
(とても無理)
死んでしまうかもしれません。
「よし、行こ」
3人に続いて、いちばん後ろから階段道を下りていきました。
「うわ、けっこう急なんだね」
初めて来た人のように驚いてみせます。
目の前を行くひょろり君が、
「だいじょうぶ?」
気にして何度も振り返ってくれました。
いちばん下まで降りきりました。
「わあ着いた・・・」
「すごいなあ、ここ」
素直に感動しているふりをしてみせます。
カメラは、きっとあとで役に立つはず・・・
そんな計算がありました。
すぐさまトートからデジカメを取り出して、
「ぴぴっ・・ぴぴっ」
景色を撮ります。
そんなふうに、あらためて写真好き(?)のようにアピールしていました。
男湯スペースのはじっこに行って、川の流れを撮影するふりをします。
護岸の下を覗きこみながら、
「あのすだれが、もう女湯?」
川沿いの先を指して、ひょろり君に聞きました。
「そうだよ、ここ下でつながってるから」
3人とも『俺たち詳しいもん』という顔をしています。
(この子たち・・・知ってる)
心臓がどきどきしました。
まさか本当に『女湯覗き』は、したことないでしょうけど・・・
護岸の下を伝っていけば、すぐに女湯の下まで行けてしまうということを知ってはいるのです。
「わたし行くね。連れてきてくれてありがとう」
3人にお礼を言いました。
もう『これでお別れ』という感じで、にこやかな微笑みを最後に印象づけます。
そのまま奥の木戸へ向かっていきました。
女湯スペースへと入ります。
すでに興奮で胸がいっぱいでした。
さっきから、ずっと心臓がどきどきしっぱなしです。
(よくやった)
われながら、パーフェクトな展開です。
自分でもよく頑張ったと思いました。
服を脱いで岩の上に重ねていきます。
(あとは・・・)
あの子たち次第でした。
(本当に来る?)
あれだけしゃべった男の子たち・・・
もし彼らに覗かれたなら・・・わたし恥ずかしすぎます。
・・・はたして、その羞恥心に耐えられるでしょうか。
下着もとって、全裸になります。
湯だまりにからだを沈めました。
もし覗かれるとしたら、左側のあのすだれの裏からです。
束ねた竹茎(?)が、隙間だらけのあの『すだれ』・・・
昨年もやっていますから、私は知っていました。
向こうから覗こうとすれば、実は私のほうからもまるわかりです。
来るでしょうか・・・
(来て。。。)
あんなに頑張ったんだから・・・
(お願い、来て)
胸をどきどきさせながら、その瞬間を待ちます。
3分・・・5分・・・
まだ気配はありません。
(まじめそうなあの子たち)
本当に来てくれるでしょうか。
もし誰かが『女湯を覗こう』と言いだしたとしても、
『そんなことしちゃだめだ』
あのいちばんの『まじめ君』が、周りを止めようとするかもしれません。
(来て)
私、みんなのために頑張ったんだよ・・・
じっとしていることに我慢できなくなりました。
湯だまりから出て、石垣をまわりこみます。
木戸の隙間から男湯を覗いてみました。
ひょろり君が湯船につかっているのが見えました。
あとのふたりは・・・
(あ。。。)
はじっこのコンクリート部分から身を乗り出すようにして・・・
護岸の先を眺めています。
腰にタオルを巻いたあの子たち・・・
(やっぱり気にしてる)
行けば女湯が覗けるんじゃないかと、きっと逡巡しているのです。
ちょっと意外でした。
まじめ君が、いちばん率先している感じです。
心の中で、彼を応援していました。
(降りちゃえ)
時間は限られています。
こうしている間にも、誰かほかの人がやって来てしまうかもしれません。
(まじめ君、降りちゃえ)
どれくらいのあいだ、そうしていたでしょうか。
木戸の隙間からなりゆきを見守りながら、祈っていました。
しばらくして・・・
振り返ったまじめ君が、ふたりに何か言っているのが見えます。
そして、あっという間に・・・
彼は、護岸の下に降りていました。
(来る!)
あとのふたりは動く様子がありません。
そこまで見届けて・・・
私は、木戸から離れました。
「ざば」
急いで湯だまりに入ります。
(来る・・・来ちゃう!)
待ちに待った瞬間でした。
お湯の中に、肩まで沈めます。
(わたし、覗かれちゃう)
心臓のどきどきが、尋常ではありません。
どきどきどき・・・
どきどきどきどき・・・
(ああ。。。)
すだれの隙間に、はっきりとシルエットが透けて出ました。
護岸の下に潜んだまま、首だけ出して・・・
こっちを覗いている人間がすぐそこにいます。
(イヤあ、変態。。。)
もちろん、こっちからは何も見えていないふりをしていました。
何も気づいていないお姉さんを演じます。
覗いた彼も驚いたことでしょう。
もともと女湯スペースは広くありません。
お湯につかっている私との距離は、3mぐらいしかありませんでした。
どきどきどき・・・
彼と真正面に向き合ったまま、何も知らないふりをします。
どきどきどき・・・
自然な感じに空を見上げて、目をつぶりました。
まぶしい陽射しを、まっすぐ顔に受けて・・・
「んー」
気持ちよさそうに表情を崩します。
お湯の中で、ぐーっと伸びをしました。
(ほら、私のこんな恥ずかしい顔。。。)
(あなただけに見せてあげる)
お湯の心地よさに『うっとり』とした・・・
満足げな『にっこり顔』をしてみせます。
肩までお湯につかった私と、すだれの向こうの男の子・・・
顔の高さは、ほぼいっしょです。
まじめ君もどきどきしていることでしょう。
目の前でリラックスする『お姉さん』をみつめながら、
お願い、お湯から出て・・・
きっとそんなふうに、やきもきしているに違いありません。
お湯から出れば、確実にまる見えでした。
高校生の男の子に、自分のヌードをお披露目してしまうことになります。
(ああん、イヤ)
(やっぱり、わたし恥ずかしいよ)
でも、やるしかありません。
これこそ、私が望んだシチュエーションなのですから。
ぼそっと、
「あっちぃ」
ひとりで、つぶやいてみせました。
そして・・・
(ああん)
お湯の中から立ち上がります。
思いっきり、おっぱいまる出しでした。
(見ないで)
(見ないでぇ)
そのまま湯だまりのふちに腰かけます。
(イヤぁ、恥ずかしい)
見られているとわかっていながら、何も隠すことができません。
(だめぇ乳首。。。)
よりによって、これでもかというぐらいに固く膨らんでしまいました。
(恥ずかしい。。。)
(わたし恥ずかしいよぉ)
あふれだす泣きそうな感情を押し隠して・・・
考え事でもするかのように『ぼーっ』と佇んでみせます。
手でお湯をすくって、自分の肩にかけました。
軽くマッサージする感じで肩を揉んで、腕をさすり・・・
また手のひらにお湯をすくいます。
「ぱちゃ、ぱちゃ」
からだにお湯をかけました。
さして大きくもない胸ですが、一生懸命に揉みあげてみせます。
男の子の視線を意識しながら・・・
まるでボディクリームでも擦りこませるときのような手つきで・・・
何度も自分のおっぱいを摩りあげてみせました。
(もうだめ)
感情が爆発しそうでした。
本当に泣きだしてしまいそうです。
とてもではないですが、この恥ずかしさには耐えられません。
手を下ろして、また『ぽけーっ』としてみせました。
ちょっとのぼせている雰囲気で、うつむきます。
手持ちぶさたな感じで・・・
アンダーヘアをつまんでいました。
意味なく『ピーン』と引っ張って、手遊びしてみせます。
湯だまりのふちに腰かけている私の股は、ちょうど彼の目線と同じ高さでした。
(ああん)
見えているでしょうか。
お湯に湿ったヘアを、手先でなんとなく弄びながら・・・
その下に見えてしまっているかもしれない『あそこ』に、
(もうだめ)
自尊心を掻きむしられます。
さすがに耐えられなくなって、
「ざぶ」
私は、またお湯の中に逃げ込んでいました。
肩までお湯に沈めた私ですが・・・
とてもすだれのほうを正視できません。
あまりに恥ずかしくて、無表情を貫くのも限界です。
お湯の中で、反転するように後ろ向きになっていました。
湯だまりのふちに両腕を置いて、その上にあごを載せます。
自分の腕に顔を突っ伏しながら、
(恥ずかしい)
羞恥心に奥歯を噛みしめていました。
泣きそうになる自分を抑えながら、とにかく顔を隠します。
(だいじょうぶ)
必死に気持ちを落ち着かせていました。
(だいじょうぶだから)
私は、お風呂を覗かれてる『かわいそうな』被害者・・・
・・・表向きは、『何も知らないお姉さん』なんだから。
(いけないのは、女湯を覗いているあの子のほう)
(私は何も悪くない。。。)
何事もないような顔で、正面に向きなおります。
とにかく意識して自然体を装っていました。
数分ごとに腰かけたり、またお湯につかったりを繰り返します。
(ああん見られてる)
自虐的な気持ちでいっぱいでした。
覗きの被害者になりきって、堂々と全裸のままでいてみせます。
(よかったね、まじめくん。。。)
(お姉さんのはだか、見たかったんでしょ?)
背徳的な興奮に、胸のどきどきが止まりません。
もう何度目でしょうか。
冷えてきたからだを温めようと、お湯の中につかっていると、
(あ。。。)
すだれのシルエットが、ちらちら動いているのが見えました。
(どうしたの?)
(もう戻るの?)
そっぽを見ているように目線をはずしたまま・・・
視界のはじっこで様子を窺います。
(・・ん?)
すだれの隙間ごしに、ちらちらと向こうの動きが見えます。
(あ!)
人影が増えていることに気づきました。
(もうひとり来た)
すだれの裏側に、顔がふたつ仲良く並んでいるのがはっきりとわかります。
どきどきどき・・・
その瞬間、プレッシャーが加速していました。
(ひょろり君?)
(それとも、おかっぱ君なの?)
どっちなのかは、わかりません。
いま来たこの子も、いざ覗いてみて私との近さにびっくりしたに違いありません。
すだれに顔を押しつける勢いで、隙間から覗いてきています。
どきどきどき・・・
やはり、この距離感は普通じゃありません。
男の子がふたりに増えて、ものすごい重圧を感じていました。
でも、迷いはありません。
(私は何も知らないんだから)
かわいそうなお姉さんになりきるまでです。
「ざば」
お湯の中から立ち上がりました。
そのまま、湯だまりのふちに腰かけます。
どきどきどき・・・
まる出しの胸を露わにしたまま、何食わぬ顔をしてみせました。
高校生の男の子たちの目が、
どきどきどきどき・・・
私のおっぱいに釘付けになっているはずです。
どきどきどき・・・
(耐えられない)
もう心臓が破裂しそうでした。
どきどきどき・・・
(もう、どうにでもなれ)
この子たちのために・・・
もっと恥をかいてあげようという気持ちになります。
(見てて)
覚悟が固まった瞬間でした。
湯だまりのふちに腰かけたまま、
「んー」
ばんざいするように、腕を真上に伸ばします。
「んー・・んんん」
全身で『ぐーっ』と、伸びをしました。
そして、そのまま後ろに『ごろん』・・・
地べたに背中をつけてみせました。
仰向けのまま気持ちよさそうに、
「ふー」
まぶしい陽射しを、全身に浴びてみせます。
空が真っ青です。
(恥ずかしい)
白い雲が、形を変えながら『すーっ』と流れているのが見えました。
(恥ずかしいよ)
のけぞるような姿勢で、両脚だけをお湯の中に下ろしています。
開き気味になった私の股が・・・
ちょうど彼らの真正面を向いていました。
(あの子たち)
さぞかし興奮していることでしょう。
たての割れ目が『まる見え』のはずでした。
(恥ずかしいよぅ)
自虐的な興奮が、どんどん高揚感を煽ります。
そのつらい体勢から、
「ふー」
お湯の中の両脚を、空中に持ち上げました。
足の置き場を求めるように・・・
両脚を大きく左右に開きます。
ひざを立てて、湯だまりのふちに足を置きました。
(ああああん)
自分でやっておきながら、
(イヤぁ、泣いちゃう)
覗いている彼らの前で、思いっきりの大股開きです。
恥ずかしい部分が、開けっぴろげに露わでした。
(お願い見ないで)
割れ目・・・というか、穴まで開いている気がします。
陽射しのまぶしさに目を閉じました。
(見ないでぇ)
自尊心が、ぶるぶる震えます。
あくびするみたいに、
「うーん、んんん」
仰向けのまま、伸びをしました。
まさか見られているなんて夢にも思わない、きれいなお姉さん・・・
リラックスを演じながらも、もう半分気が狂いそうです。
(もういい)
もう・・・だめ・・・・
(見て)
お行儀悪く、まる見えになっている私のあそこ・・・
そのあられもない格好に、男の子たちも嬉々としていることでしょう。
(見たかったんでしょ?)
何もかもを投げ出したような陶酔感に、頭がぽわーんとしてきます。
(ああ。。。)
快感でした。
恥ずかしすぎて、恥ずかしすぎて・・・
それが狂おしいほどに快感です。
もう・・・むり・・
鼻の奥がきゅーんと熱くなりました。
いまにも涙があふれそうになってしまいます。
この屈辱的な気持ちに、もう耐えられませんでした。
もう、これ以上は無理です。
立てていたひざを下ろしました。
お湯の中に脚が入ります。
仰向けのからだを捩じるようにして、上半身を起こしました。
そのまま、
「どぼん」
お湯の中に、身を沈めてしまいます。
潮時でした。
まだはっきり見えている、ふたつの顔のシルエット・・・
意識的に、頭の中を空っぽにしていました。
わざと何も考えないようにします。
(もう、じゅうぶん)
お湯の中で目をつぶりました。
(帰ろう)
冷えたからだが、温まってくるのを待ちます。
「ざば」
お湯から出ました。
荷物を置いた岩のところまで歩いていきます。
これで最後というつもりで、今度は全裸の立ち姿を披露してみせていました。
トートの中からスポーツタオルを取り出して・・・
ゆっくりと全身を拭きます。
(あ、カメラ・・・)
小道具に使おうと思っていたデジカメの存在を、
(しまった)
ここまできてから思い出していました。
(もう、だめだ)
今さら自然体を装って演技を続ける自信はありません。
それよりも、このふたりが誰なのか確かめたい気持ちに駆られていました。
からだを拭き終えると同時に、手早く服を身に着けていきます。
荷物をまとめて、その場を後にしました。
「ガタンっ」
木戸を抜けて、男湯スペースへ出ていきます。
そこに残っていたのは、ひょろり君でした。
現れた『お姉さん』の視線に、恥ずかしそうに湯船で縮こまっています。
(ということは・・・)
あれは、まじめ君と、おかっぱ君・・・
私は、何食わぬ顔でひょろり君に声をかけました。
「あれ?・・・みんなは?」
答えに困った彼は、なんとも微妙な表情になって口ごもっています。
それはそうでしょう。
まさか『あなたのお風呂を覗きに行ったよ』なんて、言えるはずもありません。
「ここ、いい温泉だね」
唯一ここに残った、ひょろり君・・・
もしかしたら、この子がいちばん真面目なのかもしれません。
「じゃあね、ばいばい」
最後まで何も知らないお姉さんを装って、別れを告げました。
階段道を昇って、森の歩道を駐車場へと向かいます。
この数時間のあいだに、いったいどれだけのことがあったでしょう。
『茶髪』、『おデブ』とのイヤな体験・・・
『まじめ君』たち相手の、どきどき体験・・・
すべては『運とタイミング』のいたずらだったような気がします。
帰路の運転の道すがら、いろいろと思いを馳せていました。
(調子に乗ったらしっぺ返しにあう)
過去にも何度も思い知らされたことです。
(成長してないなぁ)
いい意味で悪い意味でも、私は私なんだな・・・
そんなふうに反省しながらハンドルを握っていました。
(PS)
ずっと続きを書こうと思っていて、今日やっと書くことができました。
長文にお付き合いくださって、ありがとうございました。
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